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病める無限のブッダの世界 ― BEST OF THE BEST (金字塔)/BUDDHA BRAND ①

2000年のイメージとして、混沌としていたものが私には残っています。

20世紀から21世紀に変わる時、次の世紀の訪れが新たな始まりのようでした。

2000年になって、恐竜が闊歩するような走馬灯と共に核爆発が起こる事も無く、やはり、セカンドインパクトが起こる事も無かったけれど、何か不思議な気持ちでした。テレビ番組はやたらノストラダムスの予言とか、滅亡の話をして、妙に表面的にオカルトが世間を支配をしていた気がしていたからかもしれません。

そんな終末の世紀に「病める無限のブッダの世界」はありました。

ある意味でカオスな時代の産物です。

私が生きてる21世紀はあの20世紀とは世界線を隔ててしまっている気がします。知らずのうちにノアの方舟に乗ったまま21世紀に到達して、いつの間にか、20世紀は孤島のロストワールドとして、私の記憶の中に分断して存在しています。

私がこれを聞いたのは21世紀の今になってからでした。

このアルバムは、そんな記憶の扉を開いて、カレンダーを18年分遡る為のカギのように思えます。

そこに記された驚異的なレコードは別世界の様相を成していました。

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1 Super Heavy Funk Intro [オーサカ・モノレール]


ファンクなライブの幕開けです。
観客となって、一体、どんな曲がここに収められているか、期待感を持つことが出来ました。今よりもレトロだけれど、格好いい音がそこに現存しています。


2 天運我に有り (撃つ用意)

 

自分らしく生きる 今を生きる強く生きる
優しく なめたら血を見る 痛えぞ 己との格闘
悪戦苦闘で日々これ修行
(lyric by CQ)


道の切り開き方をBUDDHA BRANDに聞いたなら、天に運を任せたりはしません。自分の運は自分の手で切り開くものだと教えてくれます。イルで狂った羅針盤の目指す先にある金字塔に向けて、止まる事無く、駆け抜けて行きます。

例え、目の前に見えるのが、暗闇でも、進む道で迷っても、そのずっと先にある光を見据えて、ただひたすらに前向きに世界を描き続ける事を手を止めずに続ければ、やがて目的地へ辿り着けるのだと教えてくれます。


3 病める∞のブッダの世界


脳内の螺旋階段を上り下りしながら、病んだ世界の道のりを確実に歩んでいきます。繰り返し同じ風景を眺め続けて、そこに近づこうとすると遠ざかるようないつまでも到達しない蜃気楼みたいな場所に居る気持ちになります。


4 Don't Test Da Master [Feat. Nipps, Lunch Time Speax]

 

平然とSmack in ya face
非凡な才能 from 俺の脳細胞
Yo, 出来が違うぜ Half人Half神
I'm 宇宙人Type like 超サイヤ人
(lyric by DEV LARGE)


気づけば、ブッダの病んだ世界は目の前にあります。
怪しく彩られた四次元に、既に脳は入り込んでいます。音と言葉が成すバーチャルリアリティーは万人の知る世界を凌駕し、常識ごと変えてしまいます。縦横無尽に広がる病んだ世界の中で、この言語が脳内に深く差し込み、破壊と再生を促します。凡百の言葉を積み重ねるより非凡な1フレーズで人の心を掴むようなこの曲のリリックは、時として、柔らかい脳髄にめり込むバターナイフのように鋭利です。


5 Remote Viewer Is Viewing Brightest Future


ぐるぐると同じ世界を抜けた先には、美しい世界があります。

終末の先には明るい始まりがあると音が予知未来を伝えます。

次の世界への鍵が有るのだと思いました。


6 Ill 伝道者 (Version Spit Funk 無敵の3本Mic)

これがBuddha Brand
3000年上半期 Ill motherfuckin' shit
知ったふりしろ 特殊な技能 I-ight
昨日 今日の話じゃないこのSteelo
(lyric by NIPPS)

 

現実の裏側に潜ろうとするなら、そこはコアで謎に満ちた不気味の谷に辿り着きます。現実と空想は表裏一体の産物で両者の存在が近付くと一定の段階で恐ろしさを知覚するからです。空想が現実に露見するような言語は病んだ世界を的確に形容し、絶妙な不可思議さが、脳内を取り巻きます。

社会と並行した世界だけれど、浮世離れした思考構造に、三つ巴の怪奇な言葉が層状になって現れます。BUDDHA BRANDは病んだ世界の求道者です。切片は病的な異次元です。その領域は確実に他の思考を揺さぶりをかけるように伝導します。


7 Dead Funky President

 

路地裏の抜け道を探し出すような開放的なリズムでノリの良さが感じられます。ファンクな音と多様な情景が重なるような風景があるけれど、回りを気にせず闊歩するように時代を通り抜けて行きます。


8 大怪我3000 [Feat. Fusion Core]


油断して近付くと不意討ち食らわされるような攻撃性を持ったスタイルを提示しています。病んだ世界の番人達はどんな強者達か分かります。

 

[DEV LARGE]

 

どでかいヤバい東方の騎士
極東の主 俺プッシーメチャ好き
2000 till infinity
We back again son
言葉のパズルの俺が王様
(lyric by DEV LARGE)

 

流れるようなフロウとそれを確立する言語センスで聞くものの耳に切り込みます。他のMCに追随を許しません。魔性のマイク片手に、ワックごと燃やして昇華させる姿は東方の騎士のようです。

 

[CQ]

 

赤目のダルマのオジキ
聞く耳探し 脳裏に刺青 イル彫師
記録より記憶残し 闇切る 天神 ライカ 座頭市
(lyric by CQ)

 

歯向かう敵は乱れ打ちにするかのように怒涛の言葉を投げ込みます。まるで、鞘から一閃を放ち、渋い日本語の太刀で闇を切る座頭市のようです。

 

[NIPPS]

 

川俣軍司スタイル
ぶった斬る通り魔スタイル
虱潰しにカードを抜き
根こそぎMC's 寝首を掻く
(lyric by NIPPS)

 

常軌を逸した病的リリックと変質的フロウが病毒となってその世界には蔓延っています。油断しているMCの寝首を掻いていくスタイルは通り魔のようです。


9 Perfect Reality (Winter In Land Of Rising Sun)

 

微睡んだ群像が夕暮れの中に消えていくようにゆっくりとした音が響き渡ります。ぼんやりとした霞みに氷雪が混じり街や人を包み込みますが、一片の光が抜けるように輝きます。


10 人間発電所 (Classic Mix)

 

第7,6 コロシアム
ウニ MCs get gased like 猛毒ガス
パンチライン 炸裂
Up in ya ass 一撃一発 Blah!
(lyric by NIPPS)

 

言葉でエネルギーを生み出す"人間発電所"それがBUDDHA BRANDです。
"病んでいる""狂っている"というのは単なる酔狂では無く、計画的に練られた型破りの表現方法であると言うことが分かります。
人の眼で可視可能な世界と、時を同じくして普通じゃ見えない世界に案内してくれます。言葉の強さは下手に触れたら感電するほど、無敵の三本マイクの存在感を強く表しています。5分30秒という短い間に積み重ねられた技は数多あり、こんなMC達に無鉄砲に挑んだら、逆にその土壌を開拓され、天まで染めるBUDDHA BRANDの火が輝く病んだ世界に飲み込まれます。


11 Flute Of Madness

 

平穏な日常の中に、突然着火した煙草から発煙するかのごとくフルートの音色が入り込みます。思考を改変してしまうような紫煙が蔓延し、音を刻みます。脳の底に狂気を内包した思念がいつの間にか取り憑きます。


12 Hi-Jack (のっとり)

 

振り切る キンコンキンコン赤信号
マイクロフォン一本 横綱さえも洗脳
まるで教祖とデート
触れてはならない 脳みそ炎上
(lyric by CQ)

 

この熱病が現実と交差する時、病んだ世界は広がっていきます。
もし、一度、BUDDHA BRAND と出くわしてしまったら、そのフローとリリックは頭に貼り付きます。BUDDHA BRAND という病魔の感染力は聞いた時から、洗脳をはじめるほどに強烈です。尖端の鋭い得物は常識の振り幅を越えて言葉となって刺さり、混沌の世界の最終兵器になって、世界を乗っ取ります。2000年は不思議な年でした。終末の世紀末で、はじまりとおわりが一緒くたになっていました。そんな世界の正体をはらんだ病んだ世界観は新たな世紀が席巻し侵食する情景とリンクしていくようで、趣があります。


13 Hustler's Life

 

世界をのっとるような目まぐるしい日々を送ったら、のんびりとして、怠惰な情に少しだけ付き合って心の張り合いは遠くにおいてラフに生きてみたいと思うかもしれません。これは、そんな休暇に向かう気持ちを感じます。

 

14 ブッダの休日

 

緑の森と青い海
あくせく働く日々のメモリーとは裏腹に
ここにあるのは素晴らしい光り輝く安住の地
解放 日常の人間模様 東京におさらば
人里離れたこの地でちょっと一服入れる
体を隅々まで休ます
(lyric by DEV LARGE)

 

自分のスタイルを提示していくことは、他のスタイルと競合しても負けないように前に進んでいくことです。それは、個人であったり、世界の中であったり、大きさも様々ですが、全てが戦いです。でも、ずっと戦い続けたら、疲れます。病んだ世界にも休戦日が必要です。自分のスタイルを提示し続けることは、自分が何者かその形が掴めなければ、出来ません。沢山の知識や他の物と比較し競合していると、その形は他と混ざり、輪郭が見えなくなって、世界観がぼやけてしまうことがあります。病める世界が無限にあり続けるには、ただただ天恵に浴するように頭をリセットして心の洗濯をすることも大切なのかもしれません。そうすると、狭いトンネルを覗いていた深淵に入り込む前の広い入り口に戻って、もう一度考え直すこともできます。


15 Red Eye

 

渋い男のメロディが流れます。
錆色の街の中に存在を示しながら、その風情を背景に溶け込ませます。その足跡は強めに濃い線が流れるように描かれ、ずっと遠くまで続いていきます。

 

16 Words From True Master

 

以下の解説通りです。

http://hiphopflava.net/article_explain_buddha-brand_01.php#1-16

 

17 THEME OF BUDDHA BRAND PT 1

 

病める世界は治療不可能な難病のように最後まで異空間をさ迷わせ出口の見えない、次の旅を促します。長く続く病棟の廊下の終末に佇む鉄扉を開けた先は、二幕目の世界へ繋がっています。

 

読んでくれたらありがとうございます。 この記事はDisc2もあるので続きも書く予定です。 自分の誕生日までにどれだけ書けるでしょうか。 あと4記事くらいは書きたいですね。 5月まで頑張ります。

 

病める無限のブッダの世界 ― BEST OF THE BEST (金字塔)

病める無限のブッダの世界 ― BEST OF THE BEST (金字塔)