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病める無限のブッダの世界 ― BEST OF THE BEST (金字塔)/BUDDHA BRAND②

繰り返しの毎日を暮らしていると、いつの間にか慣れてしまって、一直線上の人生を進んでいるのに、まるで同じ道を何度も辿っているような気がします
慣れる事でこなせることはあるけれど、そのうち感覚が麻痺している事も分からなくなってしまうのかもしれません。
BUDDHA BRANDの病める世界は、私達の日常とは離れた場所にあるのか考えた事があります。
Disc1を聞いて、「これは、ラッパーのバイブルだ!」って書いておけば、間違いないと思っている自分がいるんですけど、私が書いたらすごく違和感を感じます。ラッパーじゃないからです。
だから、聞いて思ったことを書こうと考えたのですが、表現力が段違いで多量の語彙に翻弄されるうちに、自分も病んだ世界に囚われているような気になってしまいました。それぐらい、インパクトの強い作品に違いありません。

 
表現力は突出して雲を突き抜けた金字塔のように振り切っていますが、内容は地に足がついています。どこまでも、それは活動に根差している下地があるからで、真実もドキュメンタリーも内包した空想科学だから楽しめる内容なのだと思います。
そう考えれば、私達の日常にはどこか病める世界に繋がってしまうコンセントが有るのかもしれません。もしも、今生きている時間を朽ちていく歯車を回しているかのような斜陽産業に感じてしまうのなら、病める世界の方が健全に感じるかもしれません。一直線上にある世界ではないからです。

常世の世界に迷い混んだかのように、病める世界は続いています。
扉の先に扉が続くように、合わせ鏡のような永遠がずっと続くように、音が羅列しています。
1から2へ、もう一度足を踏み込んでみたなら、沼に嵌まるように、気づけば、その音に、その言葉に、病みつきになっているかもしれません。

 

 


1.RE-ENTER DA 76 ZONE

イントロから突然やってきた嵐のように音が雪崩れ込みます。
クラッチ音が日常のスイッチを切り替えるように、頭蓋を揺らして、思考に入り込みます。
気づけば、BUDDHA BRANDの病める世界が姿現す瞬間が眼前に広がっています。

 

2.Krush Groove 3

右から左 騒げよ 前の方 言えよHo!
後ろの方も返せHo! 最後は一緒に言えよHo!
そんな感じ そんな感じ
よく目ん玉見開き見な 俺達
Hey, 今日のショーに来てくれたヘッズ
ガッチリ見せるぜ 熱いライブ


イントロの勢いを更に加速させて、入口で歓迎してくれるように盛り上がりの良い曲です。
BUDDHA BRANDのリリックは一筋縄では行かない難解な表現力が作り上げた不可思議な世界観で聴衆を魅了します。そして、それを自然に聞けてしまうフローがあるからこそ、よく考えなくても音を楽しむ事が出来ます。
この曲では難しい事は言っていません。ただ、音楽を楽しむという初心に帰る事が出来ます。

 

3.REMIX (Krush Groove 4) [Feat. Suiken]

チョキならグーでも俺はパー
自由形な生き方鉄砲玉
前人未踏なアイデアに富んだラッパー
波瀾万丈なブッダの旦那

(lylic by Dev Large)

 

Krush Groove 3 から流れるように、この曲に移行していきます。
ここからBUDDHA BRANDの本領を発揮していきます。変化に富む骨太な言葉が、心を掴みます。
常識を超えたハードコアを搭載したフルメタルジャケットが何発も撃ち込まれるような攻撃性の高いリリックは、我流を突き通し、戦場を制圧するかのように、炸裂します。己の存在感を潰す事無く、組合わさった病める世界が、流れるような言葉のカッターで切り込みます。

 

4.WHAT CHA NAME?(BUDDHA)

哀愁のある音は、一つ前の曲から
は離れてずいぶんとゆっくりとした時の刻み方をします。悠久の時を超えてBUDDHA BRAND の音をディスクの彼方から連れ出そうとしているようです。

 

5.Return Of The Buddha Bros.

完全復活 スプーンさえも曲げる
無敵の三本棒 Motherfuckin' Mic
泣く子も黙る 俺の味の元は
骨まで沁みる まるで露天風呂

(lylic by CQ)


堂々とした佇まいで、カウンターを食らわすように、倍返しをしてくるようなリリックです。
蓄電された人間発電所から繰り出される紫電一閃は、技巧の傑出した言葉で飾られ、もう一度、聴衆の感心を煽るように切り込みます。
このアルバムにはDisc1、Disc2と二つの金字塔が収録されています。Disc1で一つの世界観が完成していてBUDDHA BRANDのヒップホップが渦巻いています。それだけで大きな存在感を放っています。
Disc2はもう一度BUDDHA BRANDを聞いてみようとするなら、オススメします。記憶の呼び水のように病める世界に入り込めると思うからです。


6.DL's Midnight Theme Pt.2

薄闇の街灯のぼやけた光のさざめきが、街を覆い、夜景の輪郭を浮かび上がらせます。煙のようにするすると流れる音楽は微睡みを誘うようです。

 

7.Funky Methodist

いい いいよりい Better than E
E.M.C. to da E.E.
I wanna try me 頼むよ Chill bee
これはBuddha Brand 完全無敵

(lylic by NIPPS)

 

独創的な言葉の採掘者達の軌跡がビートと共に紡がれます。
誰でも魔界に潜れたとしても、そのポケットの大きさには限界があります。出会った言葉を選んで持ち帰るにしても、どれが宝で原石か分からなければ、詩は紡げません。この Funky Methodist は、BUDDHA BRANDのやり方が顕著に示され、三者三様の持ち帰り方でリリックが作られています。
BUDDHA BRANDのふるいにかけられた言葉は、病める世界を怪しく彩る宝石のように輝きます。
Disc1の大怪我3000のように各々の言葉の刃物の持ち味を生かすリリックのように、自己のスタイルを表現しています。

 

8.D.J. Bobo James Meets D.R.D.O.I. In Future Funkamentao In B.B Space 3000

曲名から電波のように長いです。まるで何かと交信するかのように色んな音が入り乱れます。一定のリズムの取り方で向かってくる電波は異界の生命体と言葉を交わしているように、音を鳴らします。
異世界の言葉をBUDDHA BRANDの持つ翻訳機にかけたら、こんな音になって返ってくるのでしょうか。

 

9.発芽(PM-AM)

不穏な印象を受ける音ですが、タイトル通り、その時間に目覚めて、寝れない夜、頭が冴えて、ボーッとしつつも覚醒している不可思議な気持ちになります。頭は働いているのに、意識は家出して、勝手に闇夜をさ迷っているような幽体離脱している気持ちになります。


10.Ill夢 Makers 76

浮かねえ顔はもういらねえ
楽しく乗り続けるてめえに万歳
心に描くイル夢 曇りなく
この手でMake dream come true

 

Disc2で個人的に好きな曲です。
毎日がつまらなく感じたり、何を目標にして生きてるのかよく分からない単調な日々が続くと、頑張る意味が分からなくなります。
それでも、生きてるからには何かしらもがくけれど、それすら、無意味に感じてしまう事もあるかもしれません。
もしも、夢を一つ描いたのなら、愚直に真っ直ぐ進むこと、日々努力を怠らないことが歌われています。夢があるなら、実現するにはどうしたらいいか、もうよく分からないと思ってしまったら、諦める前に聞いてみたら良いと思います。そこは、ラッパーでも他の夢でも変わらないはずです。レスポンスなんてほとんど無くても、続けてくためには、自分で自分のやっていることを好きでなければ続きません。この曲を聞けば、自分が夢に向かってる姿をかっこよく誇れる気がします。


11.Buddha Pornoallstars (さわり)

よく意味を考えてみたら、直球で下ネタな言葉ですが、タイトルをサンプリング音声で言わせてかっこよく聞かせてしまうので、アルバムの中に溶け込んで、違和感無く溶け込んで、病める世界特有のイカれたイメージに貢献しています。

 

12.Illson

ライムで射殺 マイクで抹殺
Sucka即御陀仏 ライク 即身仏
スタイルいかつくたまに猥褻
腕っぷしが立つ俺はビシャス

(lylic by Dev Large)

 

BUDDHA BRANDのこのアルバムはバイブルというよりかは、経典というほうが似合うかもしれません。だとしたら、BUDDHA BRANDの経典の中身は病的な格好良さを持った一筋縄では行かない言葉の説法です。病める世界を一度拝めば、忘れられない言葉のフレーズにはまっていきます。真っさらな作文用紙に千枚通しをぶっ刺すように、過激な言葉は、まるで脳内クラックです。複雑怪奇な世界の機構に取り込まれ、容易に抜け出せない不思議な魅力に病みつきになっているはずです。

 

13.Uutochable Buddha Funk Jazz [Feat. Uutochable Destroiers Orchestra]

都会的なジャズの音色が聞こえてきます。アルバムにイントロが沢山入っているのも病める世界の特徴と言えるかもしれません。リリックだけで無く、音で沢山の世界を見せてくれます。どのイントロも表情豊かに様々な切り口から、病める世界に連れて行きます。
音で現された世界は喜怒哀楽豊かに鮮やかにどんな風景も映し出されます。音は常に時計の針のように動いています。動的です。
この曲だと走るように過ぎる都会的な街並みを想像してしまいます。

 

14.3 Fly Tongues Of Death 

アカペラのラップが収録されています。力強い声の響きは、そのものが音楽なのかもしれないと思わせてくれます。トラックが無くても、音楽として成立するのは、並外れた言葉のセンスと、相手に伝える気持ちとラップスキルが無ければ、難しいと思います。声のみというのは、良くも悪くも素が現れます。素材そのものが良くなければ、勝負できません。
この曲は、BUDDHA BRANDのエッセンスを知ることが出来ると思えば、とても、贅沢です。


計り知れない努力の賜物 Do or Die ジャックナイフ 喉元
日々が岐路 日々が岐路 ターニングポイント

(lylic by Dev Large)

 

これだけ言葉に長けている人が、努力を惜しまないからこそ、突き抜けるものがあるのかもしれないと思わせてくれる言葉です。アカペラでこれを言ってるのはかっこいいです。

 

15.Nostalgy 241169

最後の曲です。夕暮れ時、ゆっくりと余韻を残しつつ日が落ちていくようにフェードアウトしていきます。いつの間にか闇夜に向かうように、まどろむ幻影の世界に落ちていきます。そして、気づけば一夜の夢の終幕に辿り着いています。

 

 

病める無限のブッダの世界という独創性に溢れた言葉の世界には、退屈さはありません。いつ聞いてもそう思わせられる世界観を作り上げられるのは、諸行無常の中では難しいことです。このベストが金字塔としてずっと存在しているのは、一度聞くと頭に残ってしまう怪文、名文の数々がそこに詰まっているからで、それは才知と努力の結晶だと思います。日常でお腹いっぱい退屈を喰らって、滅入ってしまった時、闇夜の中を怪しく輝く金字塔から聞こえる音楽に耳を傾けてみれば、その刺激で退屈も使い切って、気持ち新たに楽しさを発電するような気持ちになれるはずです。

読んでくれたらありがとうございました。

 

【トラックリスト】

01.RE-ENTER DA 76 ZONE
02.Krush Groove 3
03.REMIX (Krush Groove 4) [Feat. Suiken]
04.WHAT CHA NAME?(BUDDHA)
05.Return Of The Buddha Bros.
06.DL's Midnight Theme Pt.2
07.Funky Methodist
08.D.J. Bobo James Meets D.R.D.O.I. In Future Funkamentao In B.B Space 3000
09.発芽(PM-AM)
10.Ill夢 Makers 76
11.Buddha Pornoallstars (さわり)
12.Illson
13.Uutochable Buddha Funk Jazz [Feat. Uutochable Destroiers Orchestra]
14.3 Fly Tongues Of Death 
15.Nostalgy 241169

 

病める無限のブッダの世界 ― BEST OF THE BEST (金字塔)

病める無限のブッダの世界 ― BEST OF THE BEST (金字塔)