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日本語ラップの感想を書いています。

Rhyme&Blues/OZROSAURUS

約6500年以上前の地球を闊歩していたのは恐竜です。
地表を占領した大怪獣は、どんな生物の足跡より、威風堂々とした力強い歩みだったに違いありません。
しかし、現実を見渡してみても巨大な生物の痕跡は感じられないほど、街並は整備されてしまい、普段から隣にいるほど、恐竜は身近な存在ではありません。
自分が歩いてきた足跡を考えてみたら、恐竜ほど威風堂々としてはいないと思います。
恐竜に比べれば雪上に残る小動物の足跡のようです。
目の前にいなくても化石が残るように存在を残せるのは稀有なことで、それは、人間も同じです。
ただ、有象無象の一つである私でも、まがりなりに人生を歩んでいる訳です。そして、その中心には横浜があります。
今回は私の地元出身のラッパーに焦点を当てたいと思います。
横浜の大怪獣といえば、もちろんOZROSAURUSです。その存在感は唯一無二です。
OZROSAURUSの曲を聞いて思い浮かべるのはベイサイドの格好いい横浜です。
横浜はなんて格好いい場所なのかと横浜市民の私が思うほどの情景が浮かび上がります。
何故なら、私の住む横浜は内陸、近隣にあるのは海ではなく川で、ストリートとは無縁な土地で過ごしているからです。
むしろ、OZROSAURUSに抱いた想いはレペゼン横浜じゃない人と同じ感覚だと思っています。
私は友達とカラオケに行けばJAM Projectを入れるような高校生でしたが、それが今はヒップホップを聞いてこんな感想を書いています。
私の住む横浜とOZROSAURUSの横浜の距離はそれと近いものを感じてしまいます。
「近くて遠い横浜。でも、なんか、知ってる気がする。」それが私のOZROSAURUSに対する印象です。
MACCHOさんの描く横浜は、湾岸の移り行く街角の情景と機関銃の残響音のようなフローが織り成すハードボイルドな世界をストリートの哲学が彩ります。
格好良さを体現する唯一無二なスタイルは、巨大なコングロマリットのように、様々な情景を取り込んだ横浜が根底にあり、都会的なビル群から薄ぼけたセピアの住宅群、年季の入った飲み屋街、西洋建築、中華街、歴史を感じさせる風景、変化を受け止めてきた街に残した足跡が見えてきます。
その足跡は、存在感ある街並みに霞む事無く、迫力を持ってトラックの上で表現されます。
横浜の情景が思い浮かぶのは「ROLLIN'045」の方が印象が強いです。では、人生について考えてみたいなら、それは「Rhyme&Blues」の方だと私は思います。

 

【トラックリスト】

01.Intro
02.All My People ~It's OS III~
03.I See U
04.Welcome To The Bay Blues Recordz feat.Kayzabro

05.Life Is One Time ~Rhyme & Blues~ feat.般若,SAY

06.My Dear Son
07.The True Story
08.The Phoenix (will rise)
09.Henz Up
10.Disrespect 4 U feat.ZEEBRA
11.On And On (DJ SN-Z Remix)
12.D's Nutz FM '06 (Vol.2)
13.Clap Ya!! feat.BIG RON & GHETTO INC
14.眩暈(めまい)
15.Soul Dier feat.SORASANZEN
16.風吹く土曜 feat.SAY
17.Outro

 

 

01.Intro

重厚なサウンドとOZROSAURUSを象徴するかのようなトラックです。横浜の群青色の海に落ちる稲妻のような存在がここに有ることを証明するように始まりを告げます。

 

02.All My People ~it's Os ⅲ~

 

今日を超え 明日を超え 死ぬ気で迎えろ Last Day

Fake MC's 食らわすPain 俺の唄鳴らせカーステ

Hey Hey 上げろ俺のマイコフォン

一言残らず Originalフロー

聞こえてますか 後ろの方

心の奥に響けよ Ah Ah Ah Ah

 (lylic by MACCHO)

 

曲の始点から終点にかけて、勢いを保ったまま、はやぶさのように駆け抜け抜けます。
前進する力、飛躍する力が半端ないリリックは、前へ前へ今という時間を飛び越えていくように未来へ全力疾走します。
真夜中の湾岸ハイウェイをトワイライトまで走り抜けて行くような情景が、閃光がちらつくようなトラックの上に展開されます。
轟音を鳴らす大怪獣のブレスは煩悩を焼き付くし韋駄天のように風を巻き上げて次のステップへ向かう気持ちを焚き付けて、先に進む人の背中をこれでもかと押してくれます。

 

03.I See U

 

Please Don't Kill Me 命の保証はねぇ
ドクター 麻酔はかけなくていい
ぶち込んでくれ ICU 今夜がヤマ 泣かないでね
Please Don't Kill Me 命の保証もねぇ
ドクター 麻酔ならかけなくていい
ぶち込んでくれ ICU 今夜がヤマ お別れだね La La La …

 (lylic by MACCHO)

 

刻一刻と時を刻むように始まる心電図の音は儚い命の鼓動を鳴らします。その上に堂々と乗るラップは、力強くその在り方を示しながらも、諸行無常の世の流れの中に身を置く人間としての現実がビートの上に血を通わせています。 弱肉強食の世界に在って、堂々とした存在感にも闇や影がつきまとい、信念に侵食する程、肉薄する現実は、自分の確かさや未来に疑念を抱きながらも綴られるリリックの生き方には等身大の人間性を感じることが出来ます。

 

04. Welcome To The Bay Blues Recordz feat.Kayzabro

 

湾岸線 首都高 大黒方面 ベイブリッジの上 M.Mの眺め

横目に流しクルージング FMで流れる 俺のMusic

 今じゃ時代が進んでもあの日のまま すべてが変わらずにはいれちゃねぇ

ただ今だに寝ても覚めてもひとつだけ 追い続けてるそれも命がけ

 (lylic by MACCHO)

 

横浜の看板、ベイブリッジを越えたら、B-BOYの居城に足を踏み込んだようです。その佇まいは貫禄があります。横浜の喧騒に横たわる姿は、仁王立ちした武将のように、歴戦の戦果を語り、更なる高みを目指すストイックさに強さを感じることが出来ます。高いプライドと誇りは波の谷間を通り抜ける一陣の潮風のように強い意思を持って走り抜けます。音楽への熱意と覚悟は一途にただある一つの道を極めて、暗礁に乗り上げたとしても、ただ、前へと進んでいきます。

 

05.Life Is One Time ~Rhyme & Blues~ feat.般若,SAY

 

気付きゃ28 まるで超特急
未だOne time 4 Ya Mind こんな風
明日も待ちきれずに今日が来る
いつからか そんなBlues
(lylic by MACCHO)

 

さざ波が砂浜を静粛に包むように、悲哀の入り交じるブルースは、無情に過ぎ行く時の流れに、人生が交錯した時、一つの生命を得たように画を浮き彫りにします。陰影を富む路地裏は、そんなに美しい景色では無いと思います。時に、しけた火薬の燻った跡が街角の影となり、薄灰の濁った空と、淀んだ空気を生み出すような黒い情緒が占有します。煩悩が闊歩しても、惑わされず、生きる事が出来たなら、光をその手に出来るだろうと、良くも悪くも転がる現実の中で、その一歩を、一つの人生の中に見出だそうとします。

 

もしもいつか散るのなら 薄汚れた街よ只

ほんの少し高い空 見せろ明日の昼から

ブッ倒れた時に気付くかな やたらと高ぇビルやら

そして太陽が沈ちるのなら 約束しろ 明日を只

(lylic by 般若)

 

ただ、日々を生きて、一つの人生を走りきる為に歩き続けた先に、見える景色が、街と空の明暗のコントラストを持った情景をリアルに再現し、一直線に明日へ向かって生きていく様子が、現実に向かう一歩をさらに支えています。

 

めぐりめぐる Time Goes...

すれ違う人波かきわけて

I Will Never Stop Life Is One Time, It's One Time

(lylic by SAY)

 

そして、美しい歌声もまた、人と交錯する人生は、絶えずに、時を重ねて、前へ行くものだと教えてくれます。

 

06.My Dear Son

 

大丈夫 いつも愛されてる 君はどんな日も
不安に震える夜もある Don't Cry Anymo'
後悔すんな あん時は遠い背後
トモダチみたく話そうぜ Yo 相棒

(lylic by MACCHO)

 

時間が過ぎ行くのを、ただ無情にしてしまうのは、歩を進めることを諦めた時です。先陣を切って前に進み、失敗や成功を重ねて、手に入れた経験は、人を作り上げる糧となります。感傷的なトラックの上で繰り広げられる言葉の世界は優しさと勇気に溢れています。何かに挑む事は、孤独にうちひしがれても、旅を続けることです。優しい心情と共に感じ取れるのは、ありのままの現実です。人の生き死にの旅路は、舗装されていない道を歩くようなものです。転びもするし、怪我もします。立ち上がるのは自力です。その時に、誰かや言葉は頑丈な杖のように、その身を支えてくれます。 厳しくも優しく見守る影は、山のように大きく、答えも無く、長く続く道のりを歩く人達の背中をそっと押してくれます。

 

07.The True Story

92 14ん時 はじめてMIC
握って叫んだ ジーンジニ
16小節 Kickしてから今
夢みてぇなホントの話さ
日々Rapにのめり込んではただ
手探りのことばかり La La
ジーンズは38インチのバギー
Used Major Damageに Cross Colours

(lylic by MACCHO)

 

リアルは人の生き方を重厚にし、その踏みしめた足跡の輪郭をはっきりとさせます。どんな日でも歩いた記憶は、やがて、歴史に変わります。横浜のストリートの生き証人は、荒れた海原の舵を切り進む船のように力強くで、その羅針盤の指す針の先は常に前を向いています。飾らないシンプルなビートの上に、一人の男のドキュメントの過去から今へと駆け抜けていく様子は、強く輝くように栄えます。そして、そこから更に未来へ紡ぐ詞は、人生を次の章へと駆り立てます。

 

08.The Phoenix(will rise)

道のりは過去になり今を越えて
一秒後の未来に会おう
その先に何が見えるだろう
その先にゃもういねぇのかも
生き続けんだ時間がない
日々息するたび また人を疑い
いつの間にこんな時代ん中に
いつも通りにまた会えるならいい

(lylic by MACCHO)

 

バックグラウンドが繰り出す魂のBluesはどんな時でも現実を見据えています。大昔に絶滅しはずの恐竜が苦難を越え、生き残り、それは唯一無二の大怪獣となって、不死鳥の如く、生命力を持った生き方をシリアスなビートに刻みます。猛進する怪獣の足跡は確実に横浜の街道に記され、それは着実に積み重ねられた栄光です。身を削って尖らしたペン先が記すのは、時間の価値とマイクへの代償に覚悟を聞くことが出来ます。一人の男の人生は、人生の意味を考えさせます。幾多の壁を乗り越えてきた力強い生き様は言葉によって再現され、聞いた人に前進する力を与えてくれます。

 

09.Henz Up

 

天に向かって両手仰げ
現実なんて一遍だけ
元気出せって言ってんだぜ
だから簡単なままHenz Up
遠慮すんなって騒げ
現実なんて一遍だけ
元気出せって言ってんだぜ
たから半端で笑ってんだ

(lylic by MACCHO)

 

重たく時を刻むようなビートに相乗するように、コンクリートの壁に焼き付いた陽射しの跡のような時の年輪が、ストリートの現実に真摯に向き合う生き様の、光と影が表現されています。
"現実なんて一遍だけ"という真理に直面した時、影に飲み込まれるような後悔をするより、光に向かって手を掲げるように、前向きに生きろと言わんばかりのhookに、堂々とした大怪獣の佇まいを感じることが出来ます。

 

10.Disrespect 4 U feat.ZEEBRA

 

ステージにいても
Studioでも そこに
Hip Hopがあるなら Street

ガキだまくらかす くそエリート
サビの唄のメロでへたれヒット
おりこうさんだが ナルシスト
それがあだで迷い込んだ Hip Hop

(lylic by MACCHO)

 

どんなジャンルのカルチャーの中にも、そこには様々な表現方法が存在していて、一つの生態系のように存在していると思います。もし、その生態系が絶滅せずに残り続けるのは、価値観の違うものが同一線上に存在しているからでは無いでしょうか。殊に、相手にディスを送る事がカルチャーの一側面に成りゆるなら、敵のように思えるくらい言いたい事がある存在が欠かせないと思います。ただこれは弱肉強食の世界のような食うか食われるかのような循環型サイクルより、陣取り合戦のようにお互いの存在を主張します。例えば、相手が恐竜なら、形こそ違えど相手もまた恐竜です。天敵同士が牙を向いた戦いの方が面白いと思います。だから、人をディスっている曲に魅力を感じるのではないかと思います。ラップ一つを取っても、人にとっての写り方の違いが分かります。この曲では、"ポップラップMusic"と称して、自分のヒップホップ感にそぐわないラップの事をディスっています。
ヒップホップの概念とは何かと考えるとキリがありません。その中でも、MACCHOさんの言う"ヒップホップ"は現実主義であり、リアルを内包した地元の情景と共にあると思います。言葉にリアルさが無ければ、それは、ヒップホップ風に見えるのかもしれないと思いました。featuringのZeebraさんのバースもそのヒップホップ論を支えるように存在していて、ストリートとは何だろうと考えさせられます。

 

11.ON AND ON(ROMERO SP Remix)

 

ON AND ON 出切るだけ遠くまで 行けるとこまで 行くべ
出口やゴールなどねぇ 所詮はどんぐりの背比べ
ON AND ON 生まれて死んでくだけ
笑えるだけ笑え
そこにゃ理屈なんかいらねぇ 出会い晴れ 別れ雨

(lylic by MACCHO)


ハイウェイを軽快に進むように、延々と続く人生のページは過ぎ去っていきます。仮に、道を間違えても関係無しに、時間は人生を加速させます。街の片隅に記されるその生きざまは直向きに現実を見続けますが、道を進むことを止めることはありません。今をどう生きるかを問われるような曲です。何のために生きるのかではなく、どこまで生きられるかを考えさせられます。ただひたすら歩き続ける旅人のような人生観は、背負い過ぎた荷物を軽くしてくれます。

 

12.D's Nutz FM'06 (Vol.2) feat.DJ Bana


シリアスから気持ちを切り替えるような愉快なMCと共に、夏がやって来ます。海が栄える季節がやって来て、次の曲へと繋いでいきます。


13.Clap Ya!! feat.BIG RON & GHETTO INC

 

このままずっといたいぐたいにアチー

今は忘れとく 答えのない毎日

感じるままに生きる 疑いもないDream

他にはない このParty

(lylic by MACCHO)

 

 

 


陽光に当てられて気持ちが高ぶる夏の暑いパーティーが始まるように、楽しい曲です。
夏の日差しを照り返す砂浜を、B-BOY達が繰り出して、それぞれの個性を発揮して彩ります。明るく賑やかな雰囲気と爽快に流れるフローが心地良く感じられる曲です。
現実を忘れるほどに騒がしい夜のパーティーは、酔いと共に朝まで続いて、軽やかに心を揺らします。

 

14.眩暈(めまい)

 

時は去りすぎていくよ待たない
目が覚めりゃ そこにいつもがあり
気怠さが揺れる夏のあの日

時は去りすぎたなら儚い
気がつけばそこにいつもがあり
気怠さ歪む夏の終わり

(lylic by MACCHO)


現実を忘れさせる夏の暑さが、残暑のように忘れ形見のような夏の思い出を振り返らせます。
一時の甘く儚い光が漂うように海辺のバカンスが走馬灯のように駆けていきます。体につきまとうような気だるい暑さのようにそんな時間は脳裏に浮かび上がります。現実を呼び戻すような夏の終わりが時の経過を残酷に感じさせてしまうかのようで、その切片に切なさを持ち合わせた曲です。

 

15.Soul Dier feat.SORASANZEN

 

想像してみ 天国もない この際
It's Easy If You Try
想像してみ 地獄もない
Above Us Only Sky
想像してみ 車や乗り物もない
ふたつの足で行けるかい
想像してみ 全人類みなが生きる
今日のために

(lylic by MACCHO+SORASANZEN)

 

個人を包む現実の一つ一つを作り上げているなら、それを遠巻きに見たら世界の情景が見えます。
どこかでは戦火が、どこかでは産声があがり、全ての現実は直視出来ない程に、パノラマが広がっています。どんな人にでも幸ある人生を歩む一歩の土台があってこそ、平和な1日が訪れます。争いが生む犠牲や、社会の格差、人と人の間にある境界も無く、ただ、全ての人に幸せがあれと力強い声で伝えてくる音楽です。

 

16.風吹く土曜 feat.SAY

 

何も言わなくてもいい
想い出してみても今は遠い
繰り返し刻む暦
時は二度とは戻らない
あの日のまんま 置き去り
生き続ける心の片隅
君を想う 季節が来るたび
君はもう遥か彼方に

(lylic by MACCHO)

 


今へと続く過去の記憶は、永遠に時を止めたままそこにあり続けます。その記憶は、振り返る事はできても、そこまで、戻ることは出来ません。優しい言葉は、街の上に置かれる手向けですが、ずっと歩き続ける事を止めない前を向いている人の言葉です。過去にすがるのではなく、過去を道しるべのように手探りで明日を探す姿に、胸を打たれる曲です。道のりがどんなに厳しくあろうと先に行く事の大切さを教えてくれます。

 

17.Outro

 

曲と共に前に進めと全ての曲を聞いた人達へメッセージを送ります。何もかも嫌になって、その場で立ち止まってしまったら、ただ、時間だけが通り抜けて行くだけになってしまいます。人生を少しでもプラスにするために、どんな事があろうとも、その先に答えが見えずとも、一歩を踏み出す勇気を与えてくれます。

 

常に時と共にある曲達は、人間が現実の中で生きている事を嫌というほど思い知らせます。時に息苦しさを感じながらも、その最中、人の生を享受していることを感じます。

どんな状況にあろうとも、大怪獣は歩みを止めません。

それは、どんな現実でも見つめ、答えのない毎日でも、生きる事に、意味があると信じているからだと思います。

それができるのは、強い人間だからです。

 

読んでくれたらありがとうございました。